築地松 ついじまつ

陰手刈職人と後継者育成

築地松は剪定が命「陰手刈り」

 陰手刈りは4~5年間に一度行われる築地松の剪定作業のことで、明治から大正期にかけて始まったといわれています。陰手刈りは、築地松の形を維持し、田畑や屋敷に日陰ができるのを防ぎ、風通しを良くし、暴風による倒木を防いだり、松くい虫から松の木を守るために行われます。
 陰手刈り後、幾何学的な造形美を取り戻した築地松。すっきりと透かれた枝葉はまるでレースのカーテンのようです。雄々しさと繊細さ。築地松独特の存在感と美しさは、陰手刈りによって生み出されるのです。

陰手刈り職人の技

 職人は、松の木を上り、独特の柄の長い鎌を振るって枝を切り落としていきます。木から木へ移動するこの作業は手間がかかり、危険を伴う作業です。
 築地松上部の微妙な反りや側面の直線部分を刈り揃えていくために、定規を使ったり、紐を張るということはありません。松の状態や伸び具合を見定めながら、熟練した鎌さばきで瞬く間に形づくっていくます。職人の勘と技にゆだねられた作業なのです。
 職人によって作業方法や道具は多少違いますが、築地松へ寄せる思いの深さは同様です。築地松を美しく仕上げて、多くの人に愛してもらいたい。その思いが築地松を美しく変身させていくのです。